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3次元測定 スポーツ

導入事例:超音波イメージから筋形状の3次元化のためプローブ位置姿勢測位に「OptiTrack」を活用|信州大学吉武研究室

2024.03.21

超音波プローブの位置姿勢測位に「OptiTrack」を活用

導入したOptiTrack製品と計測環境


ヒト神経・筋(線維)機能の基礎研究を行う上で、モーションキャプチャ「OptiTrack」カメラFlex3を使用し、超音波プローブに貼付したリジッドボディマーカーの座標データから、プローブ位置・姿勢を測位しています。
このとき、カメラ台数と配置の決定要素となったのは、複数条件での実験をする上で、マーカーが正確に認識できることでした。
超音波は、脚の筋の構造を測定するために用いており、脚の姿勢は仰臥位と立位の2つの状態で実験を行います。そのため、どちらの場合もプローブに貼付したマーカーを認識できるよう、カメラ台数と配置を決められました。


「骨格筋を構成している多数の筋線維(筋束)に注目し、その長さ変化を求める」 超音波を使った研究内容


――早速ですが、吉武先生の研究内容について、詳しく教えていただけますか。


吉武先生:
私たちの研究室では、ヒトの生体機能を解明するため、筋線維に注目した研究を行っています。
目で見える皮膚の下には、身体運動のエンジンとなる骨格筋の多くがあります。しかしながら、この骨格筋がトレーニング前後でどのような状態になるのか、効率的に力を発揮するにはどのような筋形状であることが望ましいのか、また、高齢者と若齢者との変化量の比較といった詳細は、まだ多くのことが明確にはなっていません。
そこで、私たちの研究室では、骨格筋を構成している多数の筋線維に注目し、形状の変化量を求める実験を行っています。
皮膚の下にある筋線維を観察するには、CTやMRIによる実験が考えられますが、高額であったり、専用施設が必要であったりと、研究室レベルにて簡易的に測定ができないという点が課題でした。
そこで、超音波による筋線維の形状や弾性の測定手法を用いて研究を行っています。


――筋線維の形状を測定する上で、今回は脹脛を超音波で測定されていますが、上半身にも活用されるのでしょうか。


吉武先生:
実は、ヒトの身体というのは、加齢により骨格筋の量が減少しますが、部位によってその減少率が異なります。減少率が低いのが上肢です。それに関連する握力も加齢による衰えは少ないことが報告されています。一方で、脹脛(ふくらはぎ)に代表される下肢の筋量は、加齢とともに顕著に低下します。そのため、私たちは、脹脛の筋線維を通じて、トレーニング前後の形状や弾性の研究だけでなく、高齢者と若齢者間での変化量の比較も行っています。


――加齢とともに変化のある特定の骨格筋を計測する点は、大変興味深いです。


OptiTrackの活用用途


――研究の手法として、超音波を用いられているということですが、OptiTrackはどのようなシーンで活用されているのでしょうか。


吉武先生:
OptiTrackは、超音波プローブが、どの位置・方向で筋線維を測定しているかのデータを取得するために用いています。
というのも、超音波画像による筋線維の測定は、2次元画像という特性上、プローブ直下の皮膚の下のデータに限られてしまいます。そのため、たとえ複数取得した画像データから筋線維データ同士を正確につなぎ合わせたとしても、筋に対して1つの断面図しか作成できず、筋全体の構造を3次元的に構築することは不可能でした。
この課題を解決し、筋の構造を3次元的に構築するため、OptiTrackを活用しました。
OptiTrackは、マーカーを貼付することで”モノの位置・姿勢を測位できる”ことから、超音波プローブにマーカーを貼付。これにより、プローブを動かすと、マーカーの3次元座標データから、いまどの位置でどの向きから画像データを取得しているかをマージさせることができるようになり、その結果、筋の構造を3次元的に構築することに成功しました。


「超音波プローブの位置姿勢測位システム」としてアキュイティーのOptiTrackが選ばれた理由


――アキュイティーのOptiTrackを選んでくださった理由を教えてください。


吉武先生:
旧社名(旧・OptiTrack Japan)の時に、「産業技術総合研究所」の鷲野さんから御社をご紹介いただきまして、サポート体制が良いと伺ったので御社を選びました。
実際に、販売するだけではなく、その後のサポートが手厚い印象を受け、好感を持ちました。


――嬉しいお声をありがとうございます。一方で、課題としてはなにかございますか。


吉武先生:
強いて言うならですが、ソフトウェアでしょうか。3次元超音波は安静時以外は測定が難しい点も課題です。
ソフトウェアに関しては、現在、プローブの位置姿勢測位のためにOptiTrackのソフトウェア「Motive」を使用し、超音波で取得したデータの処理には別のソフトウェアを使用しています。また、その超音波で取得した筋線維データの上に、別途測定した筋硬度のデータをヒートマップのようにカラー描画する場合なども、ソフトウェア操作が煩雑になっているのです。


――実際に操作されている様子を拝見しましたが、操作がかなり難しそうですね。


吉武先生:
はい。特に超音波データで使用するソフトウェア操作は難しく、これが簡易になると嬉しいですね。


――承知しました。社に持ち帰って検討させていただきます。
もう一点ご指摘いただいた、安静時以外の測定が難しいとは、どのような課題でしょうか。


吉武先生:
これは筋線維のデータ取得の特性によるものです。超音波でデータを取得するには、測定部位を固定しておく必要があります。
仰臥位であれば、プローブで脹脛を横一線になぞって、筋線維のデータを取得する作業を複数回繰り返すのですが、脚が動いてしまうと、筋線維データに歪みが生じてしまうのです。
そうなると、当然、運動中の筋線維の様子はデータ取得できず、筋線維の伸縮が収まり、かつ、固定された安静時のデータ取得しかできません。


――ありがとうございます。リアルタイム性がないということですね。


吉武先生:
そうです。しかし、安静時のデータでもその情報は意義がありますので、いずれにせよ、測定やソフトウエア操作が簡易化されれば、将来的にはスポーツジムなどへの導入等、活用の幅が広がると考えています。


最後に、アキュイティーに期待することとは


――最後に、アキュイティーに期待することはございますか。


吉武先生:
マーカーレスモーキャプには興味がありますね。いま業界でも話題になっていますので、気になっています。


――あっ、それでしたらひとつ。
実は、アキュイティーでは、マーカーレスモーキャプを開発中でして。身体運動計測だけでなく、研究で実施されているように、プローブの位置姿勢測位をマーカーレスで、かつ、カメラ1台のみで可能になるプロダクトをリリース予定です。


吉武先生:
えっ、それはいいですね!それがあるといろいろと楽になります。
ちなみにお値段は、どれくらいになりそうですか?


――いま業界で話題になっているプロダクトとの比較にはなりますが、半額以下の想定ではいます。またプロダクト開発の進捗がありましたら、連絡させていただきます。


吉武先生:
それはぜひ。ありがとうございます!


――ありがとうございました!


今回インタビューさせていただいた吉武先生のご紹介

吉武 康栄先生
職名:教授
所属:信州大学 先進繊維・感性工学科 感性工学コース
研究分野:運動生理学、神経科学、バイオメカニクス
OptiTrackの活用事例:
「ヒトの生体機能の解明」をテーマに、超音波プローブの位置姿勢測位のためモーションキャプチャシステム「OptiTrack」を活用することで筋線維の構造を3次元的に構築し、研究を実施
研究室URL:https://ftst.jp/ke7/YoshitakeMPL/

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